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「産後のセックスレスはマジで深刻」友人の一言にグサッ…夫は浮気?レス妻がとった行動は?

Illustration by 藤峰やまと

Entertainment

「産後のセックスレスはマジで深刻」友人の一言にグサッ…夫は浮気?レス妻がとった行動は?

mamagirlWEBだけで読める小説「シンデレラmamaガール」mamagirlWEBだけで読める小説「シンデレラmamaガール」がスタート! 第一子を出産して4カ月の新米ママ・木部さらさ。 子どもの誕生に幸せを感じながら、子育てに追われる毎日。生活の変化と共に夫との関係にも少しずつ変化が。 ママ友との何気ない会話をきっかけに小さな心配が次第に……。

第一話 ママ友ランチは危険信号

澄み切った空の広がる月曜日、AM11:30…-
ママたちで賑わうフォトジェニックなカフェに、ひとりの女性の声が響き渡る。

「えっ!ちょっと待って、みんなもうしてるの!?」
生後4か月の娘が寝ているベビーカーを足で揺らしながら驚きの声をあげたその女性は、木部さらさ31歳。

プリンになってしまった髪を隠すように高めシニョンに髪をまとめ、いつでも授乳ができるようにTシャツにインスタで見つけた流行りのロングスカートを合わせている。

その横で、パンケーキを頬張りながら、ロングの茶髪にたっぷりのまつエクをぱちぱちさせて、さらさと同じ産院だった山内ニイナが大きくうなずいた。

ニイナ「母体検診が終わった後、エッチOKですよって病院の先生に言われたから、パパとしてみたらさー」
フォークを置きながら、ニイナがオーバーリアクションを見せる。

ニイナ「超-痛いの!処女の時より確実に痛かったよ、あれ」
美咲「ちょ、ちょっと…」

ニイナの声を制するように、同じく産院で出会った渡辺美咲・38歳が口を挟む。
黒い髪をきちんとひとつに束ね、耳には一粒パール、白シャツにジーパンのコンサバスタイルが似合っていた。

ニイナ「そんなこと言って、美咲さんだってもうしてますよね?」
さらさ「え、え、そうなんですか!?」

ニイナとさらさの視線が、一気に美咲に集まる。美咲はあまりにもじっと見てくる二人に、ひと呼吸おくとうなずいた。

美咲「こんなとこで言うことじゃないけど…まあ、時々」
ニイナ「ほらー」
満足げに、またパンケーキを頬張るニイナ。

美咲「で、でも私は…正直どう断ろうか悩んでる。和人でいっぱいいっぱい」
言いながら、美咲はベビーカーで眠る息子の和人を見つめる。ニイナが話を戻すように、さらさにフォークを向けた。

美咲「てゆうかさ、その驚き方だと、木部さんはまだしてないの?」
(そういえば育児と育休明けの時期ばっかり考えて、旦那とそんな雰囲気になることすら忘れてた…)

心の中で呟きながら、さらさは二人を見やる。

さらさ「えっ、あ…旦那も求めてないし、私も特にそういう気分じゃない」
ニイナ「ははーん」
ニイナが高級ブランドのロゴが付いたママバッグから、お湯を入れた水筒とミルクのキューブを出す。


そして…
ニイナ「浮気、疑ったほうがいいんじゃない。産後のセックスレスはマジで深刻だよ」
(え、旦那が浮気…?)

思わずさらさの頭に、パンツ一丁で寝ころび、携帯ゲームをしている夫である宗太の姿が浮かぶ。
さらさは思わず、手を顔の前で振った。

さらさ「ない、ない、ない、ない!うちに限って」

ニイナ「だってさ、男の人って普通に考えて、性欲を処理しないといけない生き物じゃん?あ、もしかして、木部さんちのパパは一人で処理できるタイプなのかな。だとしたら、うちのパパにも見習ってほしいわー」

テーブルに置かれたニイナの携帯画面には、年が離れた会社経営の旦那さんとの子どもの2ショット写真が幸せそうに写っている。
(ニイナさんは、子どもがいても旦那さんとラブラブなのか…)

子どもが出来てから、宗太とキスすらしていないことに気が付き、さらさの心がちくっと痛んだ。察したのか、美咲が柔らかい口調で話しかける。

美咲「夫婦それぞれタイミングがあるしね。きっと心配ないよ」
さらさ「…そう…ですかね」

なんとも言えない気持ちで、目の前にあるパンケーキを見つめた。


その夜…-
オレンジの小さな電気が光る寝室のベッドで、さらさと宗太が並んでお互いの携帯を無言でいじっている。
さらさが出産後は、ダブルベッドの横にベビーベッドを付けたし、宗太、さらさ、娘のひなたの順に川の字で寝ていた。

携帯をスクロールしている宗太を、ちらりと見やる。
(…だめだ。頭の中でセックスレスの話が離れない)

さらさが見ていることを気にもしない宗太の姿に、余計カフェの会話を思い出してしまう。
(でもなー、セックスレスだとしても宗太が浮気するとは思えないけど…)

宗太は、元々同じ大学サークルの先輩だった。
ひとり暮らしだった宗太の家で、サークルの後輩たちとたこ焼きパーティーや宅飲みをしたり、先輩後輩問わず慕われていた宗太にいつしかさらさは惹かれるようになっていた。

そして、大学時代から付き合い、社会人4年目で結婚。
ごくごく普通の出会いで、結婚も普通の流れだった。
(まあ、浮気はないとして、産後のセックスレスはどうしても気になる)


宗太から携帯に視線を移し、「セックスレス」を検索してみる。
第二キーワードにすぐ、「産後」の文字が出て、その先に「浮気」の文字が自動検索ワードに出てくる。

さらさ「うそっ」
思わず声に出すと、携帯を見ていた宗太が顔だけさらさに向けた。

宗太「急になんだよ」
さらさ「えっ…とっ」
慌てて携帯の検索を消すさらさの視線が、宗太と合った。

大学時代のことを思い出した後だからか、いつもと変わらない宗太に、それとなくセックスレスについて聞いてみても大丈夫な気持ちになる。
(他人事のように聞いてみるのもありか。セックスレスなんて、結構テレビでやってるし、聞くのは変なことじゃないよね)

さらさ「なんかさ、今日ママ友から聞いたんだけど、産後いつから始めるかって」
宗太「なにを?」
さらさ「ほら…なんていうか…」

答えを待つようにのぞき込んでくる宗太に、鼓動が音を立て始める。
(やばっ、いざとなると言いにくいっ…でも、ここまで来たら言うしかないよね)

さらさ「夜の生活だよ」
宗太がきょとんとした顔をした。

寝室が、しんとする。
同時に、さらさの鼓動が加速していく。

(えっどうしよ…!なんか、変な空気になった!?話題をかえるべき!?)

慌てて何か話そうとした、その時……

宗太「そんな気持ちわかないだろ(笑)」
手に持っていた携帯に視線を戻し、宗太が笑う。

さらさ「え?」
宗太「育児中に、そんな気持ちわかないだろってこと」

その言葉に、さらさの頭にはニイナと美咲の会話がよぎる。
(あの二人はそうじゃないって言ってたけど…)

思わず口ごもると、宗太は携帯をいじってない手でむにゅっとさらさの頬をつねった。

宗太「まあ、卒乳したらわかんないけどな。反動ですごいことになるかも」
言いながら宗太がにやっと笑い、携帯を持っている手でさらさを抱き寄せる。

足をからませ、羽交い絞めにされた。
さらさ「もうっ急にやめてよ!ひなたが起きちゃう」
拒否するように言いながら、宗太の腕の中でさらさの心はどこかほっと心が落ち着いた。

(なんだ…ちょっと安心したかも)
(夜の生活がなかったとしても、私たちはきっとこれでいいんだ)

笑いながら宗太が腕を離し、また携帯に視線を戻す。

さらさはそんな宗太の横顔を見つめた。

宗太「そういえばさ、沙彩に会ったんだよ。偶然」
さらさ「え!」

思わず名前の登場に、さらさが思わず目を丸くする。

沙彩はサークルの後輩で、宗太もさらさも良く知っている存在だった。
アイドルのようなかわいらしい見た目ながら、男子だけでなく女子からも評判の良い甘え上手な性格は当時サークル内で人気だった。

さらさ「どこで会ったの?」
宗太「商談先で。」
さらさの鼓動が少しずつ音を立て始める。

沙彩はサークル内で人気があったが、一方で良くない噂もあった。

さらさ「…そうなんだ。でも気を付けてよ、あの子には。惚れられたら理性きかないじゃん昔から。ほら、他校で彼女いた男の子と噂があったりし…」
宗太「それがさ」

宗太が携帯をスクロールしながら、会話を遮る。

宗太「印象変わってたんだよ。仕事を頑張ってる感じで。先方も企画部期待のエースって紹介してきた」
さらさ「へー」

返事をしながら、ヒールを履いて仕事を楽しむ沙彩の姿が浮かぶ。
さらさの胸の中に、小さな嫉妬のような寂しい気持ちが生まれた。

(私も出産前は夜まで仕事して、飲みにいって、週末は美容院に行って…)

ぼーっと考えていると、さらさの携帯画面がぱっと消えた。

黒い画面に映る自分は、髪はぐしゃぐしゃで、黒い画面でもわかるくらい目の下にはクマができている。

(私って、女性として今幸せなんだろうか)
ふと頭によぎった時、わあーっとひなたが泣き始めた。

はっとして、悩む暇もなく、隣のベビーベッドにいるひなたに近づく。

さらさ「はいはい、ひなちゃん、どうしたのかなー?」

宗太はそんなさらさの様子を見ながら、小さく息をついた。
そして、背を向けて携帯の「あるアプリ」を見つめる。


宗太「………」

名刺のデザインが施されているそのアプリを、宗太は今日何度も見ていた。

今も同じように、アイコンをタップして開く。

携帯のブルーライトが、何かに迷うような宗太の顔を青く照らす。

隣で泣くひなたの声とさらさのあやす声を聞いて、宗太はアイコンを閉じた。

そして、さらさから見えないようにベッドサイドテーブルに携帯画面を伏せて置いた…

⇒第2話へ続く

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Ayaka

ライター
ライター。ファッション雑誌、作詞提供、携帯ゲーム脚本など書くことを仕事にしています。現在、おてんば娘に振り回され中。
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