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夫の浮気相手とまさかの遭遇…キャリア女性とボサボサの妻、惨めで何も言えない

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夫の浮気相手とまさかの遭遇…キャリア女性とボサボサの妻、惨めで何も言えない

mamagirlWEBだけで読める小説「シンデレラmamaガール」mamagirlWEBだけで読める小説「シンデレラmamaガール」。 さらさが夫の浮気疑惑を払拭できずに家を飛び出したら……。まさかの展開に――。

第5話:惨めな自分

ヒールの音を鳴らし、沙彩がホームに降りてくる。
さらさは時が止まったように、沙彩を見つめた。

(沙彩……?)

颯爽と降りてきた沙彩が、足を止める。

沙彩「やっぱり、さらさ先輩だ」
一瞬驚いたような表情は見えたが、すぐに大学時代と同じように愛くるしく微笑んだ。

さらさは、きゅっと持っていた荷物の手を握り締める。
沙彩の視線が大きな荷物に向けられた。

(この状況…)

大きな荷物に抱っこ紐の中で眠る子ども。誰がどう見ても、帰省にしか思えない身なり。

そしてさらさの目は、泣いた後のように腫れている。

この状況に気づいているであろう沙彩の気持ちを考えると、ふつふつと怒りが湧いてきた。

(バレちゃったかなとか、それともラッキー宗太に会えるとか思っているのかな)

(…ひとことでもいいから言ってやりたい。この場で謝ってもらいたい)

思いながら唇をかみしめ、沙彩を見つめ返した、その時……

沙彩「先輩、すっかりママですね。憧れます」

さらさ「え?」

沙彩が手入れの行き届いた髪を、片耳にかける。

予想をはるかに超えた言葉にさらさは言葉を失った。

沙彩「私なんか仕事に追われちゃって…」
沙彩が手に持っていた携帯電話のバイブが鳴る。

沙彩「あ、取引先だ…せっかくお会いできたのにすみません。宗太先輩によろしくお伝えください」
何事もなかったかのように、電話にでてさらさの横を過ぎていく。

香水の艶っぽい香りが鼻についた。

(何か言わないとっ…)

拍子抜けしても胸に消えない怒りに任せて、去っていく沙彩を目で追おうと振り返ると、
ホームによくある鏡に自分の姿が映っていた。


眉がまだらのすっぴん、髪はプリン状態、スニーカーにジーンズ。

自分と目が合い、急に恥ずかしくなった。

(今の私の姿で…きれいにしてる沙彩に何か言うのって恥ずかしい)

目をそらし、唇をかみしめた。

キーンという音とともに、乗る予定の電車がくる。何も考えず、吸い込まれるように乗った。

抱っこ紐をぽんぽんとしながら、流れる車窓を見る。

(何もかもが嫌かも)

涙をこらえるのに必死だった。

(もう本当にいや…どうにかしたい…)


そして……
気が付くと、実家そばの区役所に立ち寄っていた。

(離婚届けって婚姻届けの隣にあるんだ)

さらさ「すみません…」
戸籍窓口で、感じの良さそうな職員さんに話しかける。

まだどうするか決めていないけれど、離婚届をもらった。

(離婚したところで何かあるわけじゃないのに)

もう頭がぐしゃぐしゃだった。

(途方に暮れるってこういうことか)


離婚届を見つめていた、その時…-

「もしかして、さらさ?」

振り返ると、落ち着いたダークブラウンのワンレンの髪をかきあげ、シンプルなデニムにヒールを合わせたスレンダーな女性が立っている。

さらさ「え!沙織?帰ってきてたの?」

大学時代、毎日ずっと一緒にいた沙織だった。

沙織は、さらさが結婚するのと同時期に会社を辞めた後、ニューヨークに留学しwebデザインの勉強をしていた。
(あれから、連絡途絶えっちゃったけど…)

沙織「ちょっと、何それ!?え、どういうこと」

沙織の声に、はっとする。

さらさ「これは……」

手に持っていた離婚届を見やる。

ふっと緊張の糸がとけたように、さらさの目からぽろぽろと大粒の涙がこぼれた。
周りの視線を感じているけれど、涙が止まらない。

沙織が親友らしく、ハンカチをさらさの目元にあてた。

沙織「引っ越したばっかりでなにもないけど、近いからおいで」

(沙織の優しさに余計涙が出る)

泣きすぎて言葉にならず、さらさは大きくうなずいた。

………


カーテンと小さなソファにテーブル、周りにはまだ3個ほど荷ほどきされていない段ボールが詰まれていた。

沙織がコーヒーをテーブルに置いてくれる。ひなたは、すやすやとソファに上で寝てくれていた。

沙織「かわいいね、ひなたちゃん。」

さらさ「うん…いつもは、寝ないんだけどなんか今日は寝てくれる」

沙織「空気読んだんじゃない?笑」

さらさ「そうかもね」

さらさにふっと笑顔が戻る。沙織はさらさの表情を見て、優しく言葉を始めた。

沙織「で、何があった」

さらさはハンカチで鼻をぬぐうと、ぽつりぽつり話はじめた。

さらさ「えっと……」


さらさはセックスレスのこと、宗太と沙彩のことをすべて話す。

コーヒーカップに口をつけながら、沙織がじっと聞いてくれる。
しばらく話した後、さらさは息をついた。

さらさ「…で、気が付いたら離婚届取りにいってた」
沙織がことんと小さなテーブルに、コーヒーカップを置く。

沙織「あのさ、結局さらさは離婚したいの?」

率直な質問に、さらさは口ごもる。でも、眠るひなたの顔を見ると…

さらさ「分からない…どうしたらいいか。離婚がよぎるけど、現実的に働いていない自分がいて、養っていけるか分からなくて。」

金銭的にも、離婚なんてできないが本音だった。

(でも今私は子育てをしている。これ以上何をしろっていうの)

働いていない自分へのうしろめたさと、育児の大変さへの夫の不満が入り混じる。
沙織が察したように話し始めた。

沙織「私、仕事辞めて色んな海外見てたんだよね。で、みんな海外の女性って自立してんだよ」

さらさ「自立…?」

沙織「離婚したくても出来ない、金銭的な理由でもやつく…」

沙織「でも、自分の人生は自分で決められるように選択肢をつくっておくの。それが自立」

沙織「企業に勤めることだけが、お金を稼ぐってことじゃないよ。日本ではリスクのように思えるけど海外じゃ当たり前」


大学を出て、企業に勤め、結婚して、子どもを産んで、また時短で仕事復帰する。
時短になるとお給料が少なくなる分を宗太で補填する。
そう考えていたさらさにとって、思いもよらない考え方だった。


(勤めるだけが、仕事じゃないのか)


沙織「さらさは大学時代おしゃれで有名だったじゃん!バカみたいに服買っててさー」

さらさ「え?」

沙織「そのセンス、今こそ生かすチャンスかもよ」

さらさ「そんな、私なんて」

沙織「だめだめだめ、さらさらしくない。私が海外いきたいけどリスクあるかなって悩んでた時、言ってたじゃん」

沙織「なにかあったら、私が仕事紹介するし思い切ってこいって」
確かに、沙織を送りだすとき言っていた。

沙織「今度は、私の番かな。さらさがシングルマザーで大変になっても、私が仕事紹介するよ!」
その言葉に、さらさの気持ちがふっと軽くなる。

さらさ「ありがとう沙織。私、なんか頑張れそうな気がする」

もう湯気の立たなくなったコーヒーを見つめながら、さらさの鼓動が高鳴った。

(いや、そうじゃない)

選択肢を作るという言葉が背中を押す。宗太によりかかっていた自分にもはっとさせられた。

さらさ「がんばらなきゃいけないんだ」
沙織がぽんとさらさの背中を押した。

沙織「そうこなくちゃ!前向きになったら即行動しなよね!これニューヨーク流だから」

大きくうなずき、さらさは立ち上がると抱っこ紐を手に取った。

………

沙織の家を後にし、実家のチャイムを鳴らす。

しばらくすると、慌てて母がでてきた。

母「ちょっと、その顔どうしたの」

さらさ「えへへ」

岩のように腫れた目元を隠すように笑って見せる。

母が心配そうに見つめた後、抱っこ紐のひなたを覗き込んだ。


母「とりあえず、ひなちゃんもいるし中に入りなさい。話はそれから」

沙彩に会って傷ついた自分のこと、離婚届、それから沙織と話した自立…-。

(展開、早すぎるかもしれないけど)


母がさらさの手から荷物を取り、玄関に向かって歩き始める。

自分には子どもがいて、立ち止まっている時間はなかった。


(もうこうなったら、やりたいことやって自立しよう)  


母の背中を見つめ、胸に秘めた一大決心をしっかりと確認した。


そして……

さらさ「あのさ、お母さん」

つづく

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Ayaka

ライター
ライター。ファッション雑誌、作詞提供、携帯ゲーム脚本など書くことを仕事にしています。現在、おてんば娘に振り回され中。
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