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「これこそが本当のボクサー」ロバート山本のベスト3 ~ボクシング編~

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「これこそが本当のボクサー」ロバート山本のベスト3 ~ボクシング編~

僕の大好きなものから「これぞ」というものをランキングで紹介していく「山本博のベスト3」。

今回は満を持して、ボクシングのベストバウト3を……といっても選びきれないので、大好きな井上尚弥選手の試合から「ベスト3」を選んでいきたいと思います。
 

■3位 井上尚弥選手vs田口良一選手 日本ライトフライ級タイトルマッチ

3位は、井上尚弥選手vs田口良一選手 日本ライトフライ級タイトルマッチ(2013.08.25)

世界3階級王者(ライトフライ級、スーパーフライ級、バンダム級)であり、今年は「世界3団体統一王座」の期待もかかる井上尚弥君。そんな彼がはじめて挑んだタイトルマッチの相手、それが田口良一選手です。

そもそもの話をすると、尚弥君はプロテストの相手が当時のライトフライ級の日本チャンピオンなんです。そんなのあり得ます? しかも、いいところまで追い込んでいるんです。

デビュー当時から「モンスター」と呼ばれ、期待値が大きかった尚弥君。最初は騒がれたのに、その後に伸び悩む選手ってボクシングでは多いんですが、尚弥君はそのままの勢いでわずか4戦目で日本タイトルマッチの舞台まで駆け上がります。

対するチャンピオンの田口選手は、防衛する側にもかかわらず、「僕は挑戦者です」と宣言してリングに上がります。田口君も愛嬌があってすごく愛された選手で、人気あるんです。

結果、尚弥君が勝利を収めましたが、キャリアで初めての判定にもつれ込んだ試合になりました。尚弥君はケガもあったみたいですけど、何よりも減量がキツかった。今のバンダム級は52〜53キロなのに、ライトフライ級って47〜49キロですから。本当に限界まで落とした状態で戦っていたんだなと。

一方の田口君にしても、尚弥君と判定までいったことが自信となって、そこからこの階級で世界統一王座にまでなるんです。実際、田口君は「井上尚弥選手との試合を経験したことで、世界チャンピオンになることができました」とコメントしています。そういう“高め合うライバル関係”っていいですよね。
 

■2位 井上尚弥選手vsファン・カルロス・パヤノ選手

2位はWBSSバンタム級1回戦(2018.10.07)

WBSSというのは、「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ」。ボクシングの世界には、WBA、WBC、IBF、WBOといくつもの団体があって、それぞれに世界王者がいます。そのなかで本当に強い奴は誰なのか? 世界王者クラスの選手を8人集めてトーナメントで争う、まさに夢の戦いです。

変な話、チャンピオンのなかでも強い相手を選ばない選手っているんです。相手を選ぶ際に、強い対戦者を選ぶ人もいれば、防衛記録を伸ばすために弱い相手を選ぶ人もいる。でも、WBSSは出場しなければ「なぜ出ないんだ?」という話になるから、まさに逃げ場のない戦いといえます。そんなビッグトーナメントの初戦で当たったのがパヤノ選手です。

この試合の尚弥君の何がすごいって、1分10秒で世界最強レベルの人間を仕留めるんです。1分10秒といっても、実質の攻撃時間は2秒ですね。1分間じっと様子を見て、ファーストコンタクトのワン・ツー2発で倒しちゃったんですから。

尚弥君はデビューがライフフライ級と上で紹介しましたが、やっぱりバンダム級の今はパワーも半端ない。そして、相変わらず速い。

だいたい階級を上げていくと、どこかでやっぱり体格差が出てきて苦労するんです。倒せなくなるんです。そんな、普通であれば倒しきれないはずの相手を一撃で倒したパンチ力とスピードは、まるで居合斬り。剣を抜いた瞬間、相手が倒れているような試合でした。

「え、え? 今から斬り合うんじゃないの? もう斬られたの?」という感じ。『ドラゴンボール』で、界王様のところから帰ってきた悟空が一撃でナッパを倒したじゃないですか。あのときのような別次元の強さを見てしまった……という衝撃でした。
 

■1位 井上尚弥選手vsノニト・ドネア選手

1位は 井上尚弥選手vsノニト・ドネア選手 WBSSバンタム級決勝(2019.11.07)

以前にも、このコラムでも書かせてもらったのですが、去年行われたドネア戦です。

改めて思うのは、「新旧交代劇ではない」ということ。まだまだドネア時代でもあり、そして井上尚弥時代でもある。どっちの時代でもあるんだなということを感じさせてくれる名勝負だったんです。後ろから追いかけてきた尚弥君が抜いた瞬間を見たんじゃなくて、“どっこいの瞬間”を見れた!っていう。

もちろん能力的には違いはあるだろうし、尚弥君も納得のいかない部分はあったはず。でも、試合展開としては本当にどっこいの戦いになりまました。

それと、頂上決戦やライバル対決って、どちらかがヒールに描かれがち。でも、あの試合にはヒールがいないんです。尚弥君はもちろん、ドネアのことも日本人はみんな大好きなんですよね。

というのも、ドネアはフィリピン人なんですけど本当に日本のことが大好きで、日本の若手ボクサーを指導してくれていることもファンならみんな知っています。だから、僕も会場にいましたけど、ドネア入場のときの歓声がすごかったんです。

なんだかボクシングの新しい歴史を見ているような気分でした。本来なら、「こっちを応援したい!」「こっちに勝ってほしい!」と思うからみんな興奮して声を出して応援するんですけど、どちらも正義のボクサーとわかった上で試合を見たときの素晴らしさ。

試合が終わったときの2人の抱擁も含め、お互いがリスペクトして、お互いに一言も悪く言わない。これこそが本当のボクサーなんです。

ボクサーは、憎みあって戦っているわけではないんですね。互いに苦しいトレーニングを乗り越えてリングに上がっているのがわかっているからこそ、相手へのリスペクトが生まれるし、リングに覚悟を持って立つことができるんです。

ボクシングとは、リスペクトのスポーツである。そういった部分もあの試合で世間の皆さんに伝わったんじゃないかなと思います。

 

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ロバート 山本博

ライター
2018年で結成20年を迎える、お笑いトリオ・ロバートのメンバー。テレビ番組や劇場でのコントではツッコミとして活躍する一方、ボクシングのトレーナーとしてレッスンを開講したり、相方の秋山竜次から「むちゃぶり」で描かされた「むちゃぶりかみしばい」(文芸社)が出版されるなど、多方面に渡って活動している。趣味:ボクシング(フェザー級、戦績:1戦1勝1KO、トレーナーライセンス取得)、ポケモン、お城巡り、蕎麦屋巡り、体を動かすこと特技:ルービックキューブ、ロボットダンス、オカリナ、運動保育【育児絵日記Instagram】yamamotohiroshipapa
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