撮影/mamagirl編集部
Entertainment
【先輩ママ特別インタビュー】親子の笑顔をもっと増やせる育児の多様性とは
日本中の誰もがベビーシッターサービスを使えるようにしたい
―まずは、キッズラインを立ち上げるまでの経沢さんのご経歴について教えてください。
経沢:大学卒業後、新卒でリクルートに入社し、営業職をしていました。その後、一度ベンチャー企業を挟み、当時まだ社員十数人程度だった楽天に入社。26歳のときに、自宅で女性のマーケティングに特化したトレンダーズを起業。その後、41歳でキッズラインを創業しました。プライベートでは、30歳で第一子、31歳で第二子、35歳で第三子の出産を経験しています。現在はシングルマザーでもあります。
―育児と社長の両立をしながら走り続けている経沢さん。なぜそこまで頑張れるのでしょうか?
経沢:両親の教えは大きいと思います。幼い頃から「経済的に自立した女性になりなさい」と言われ、また、門限が厳しく、高校生まで家族そろっての夕飯がルールでしたし、大学生でも外泊は禁止。私自身、はやく自由になりたいと思っていました。だからこそ、就職をして自分の力で自由に稼げることを目標にしようと考えました。特に新卒時は、一つの区切りとして「30歳までに形に残る仕事をしよう」と考えていたので、頑張れば頑張っただけ成果が出る営業職を選びました。当時のリクルートは男女の区別はあっても差別はない会社。がむしゃらに働いていましたね。
―幼い頃からお母様の働く姿も見られていたのでしょうか?
経沢:いえ、本当に一般的な家庭で、専業主婦の母でした。母は細かいことに気が付き、子どものためなら先回りしてなんでもしてくれるタイプ。中学受験の時も、私がつまずいた問題を先に勉強して、教えてくれていたほど。本当に尊敬しています。私は完璧な母親の姿を見てきたからこそ、家事と育児を両方できるのだろうか、と不安に思っていました。でも、女性として働きながら自分らしく生きていくというのを人生のテーマとしていたからこそ、全てを自分でやろうとするのではなく、保育園や場合によってはベビーシッターさん、家事サポーターさんにも頼ろうという発想に至ったのだと思います。
障がい児の24時間介護と社長業、救ってくれたのはベビーシッター
―経沢さんご自身もベビーシッターサービスを受けられていたのですね。
経沢:はい、本当は保育園に預けて復帰するものだと思っていましたが、妊娠中にお腹の子どもに障がいがあると聞いて、絶望的に感じました。保育園がワーキングマザーにとって救いだと思っていたからです。当時は会社を辞めようかと思いましたが、社員に対しても責任がある。私は24時間介護が必要な子どもを持って、どのように生きていくべきなのか、本当に悩みました。そこで、ベビーシッターという存在を知り、救いを求めたのです。
―キッズラインでは、「日本にベビーシッター文化を」をミッションに掲げていますが、この思いに至った背景を教えてください。
経沢:先ほどもお伝えしましたが、30歳のときに出産した長女は重い障がいを持っていました。妊娠5カ月の時点で障がいが判明し、周囲は「産むことは諦めなさい」と反対。でも、私は最後まで責任を持って子どもに向き合うと決めていました。全力を尽くしたいと。その後、奇跡的に無事に出産でき、長女は4歳まで生きることができました。しかし、当然保育園には預けられません。当時社長だった私は、「出産後は保育園に預けて復職」という考えが砕かれ、どうしたらいいのかわからない状況。そこで必死で方法を調べてベビーシッターサービスに行き着いたんです。
しかし、当時のベビーシッターサービスでは、一般的には富裕層向けのサービスをが中心でした。まず入会金を払い、月額利用料金も必要で、依頼ごとに1時間3000円以上でした。私のようにさらに病児保育となると時給も5000円以上で対応してくださる方も見つかりづらい。仕方がないことだとは思いますが、自分の給料以上にベビーシッター代を払っている状況でした。でもあるとき、ベビーシッターさんに報酬を聞いたら、皆さん献身的に仕事をしてくださっているのに、あまりに対価に合っていないという感じの印象を持ちました。保育とは人が提供するサービスなので、いいサービスを提供するには良い人が良い条件で働けるようにしたらいいのでは。保育人材の不足も解決できる一つの方法になるのではないか?と考えるようになりました。インターネットで直接自分で探して、相手も選べることから、利用する側の金銭的にも心理的にも負担を減らせる仕組みにしようというのが、キッズラインの発想です。
―たしかに、ベビーシッターサービスは富裕層が使うイメージでした。
経沢:ベビーシッターサービスはどこも素晴らしいサービスを提供されていると思っていますが、キッズラインの仕組みの変わっているポイントは、利用者さんは自分に合ったベビーシッターを顔写真や経験、お住まいの地域、そして他の人たちの利用者レビューから自分で選び、直接依頼をかける。また、ベビーシッターさんは自分のプロフィールやスケジュールを表示し、自分の好きな時給を設定し、自分らしく働ける仕組みになっています。こうすることで日本中の誰でもベビーシッターを使えるようにしたいというのが私のビジョンです。
育児も多様性が認められるべき
―経沢さんが、お子様と接するときに気をつけていることを教えてください。
経沢:子どもの自己肯定感を大切にしています。叱ることは今も昔もしないです。また、人生はなんでも本人が決めることが大切だと思っています。親がやってほしいことを押し付けるのではなく、本人が人生を選び取っていくイメージです。私はできるだけ選択肢を提示したり増やしたりするのが自分の役割だと思っています。例えば学校選びに関しても、いくつか一緒に見学に行っても本人が「ここがいい」と言ったら本人の意思を尊重してきました。自分の人生は自分で決められる大人になってほしいと考えています。
―お子さんの反抗期などはどう乗り越えましたか?
経沢:あまり反抗期はなかったと思います…。特に、娘はいま10代で、思春期まっただ中。海外に留学しているのですが、私がシングルマザーで大黒柱だということがわかっているのか、反抗したりぶつかったりすることはありません。逆に「ママは社会のために頑張ってね」と応援してくれて、私の方が励まされることが多いです。
―すごくいい親子関係ですね!
経沢:当然、私の育児が正解ということではありません。それぞれの親子に健全な距離感が存在しているはずだと思っています。だからこそ、まずは「育児の多様性」が認められるべきだと思います。
―たしかに親子とはいえ個人対個人なのだから、「こうあるべき」に縛られる必要はないですよね。
経沢:私は、自分のことを育児に向いていない人間だとさえ思っています。ママ友を作るとか、子どものために学校行事に頑張って参加するとか、あまり得意ではありません。そういった過去もあるので、良い意味で「私は向いていない」と割り切って、楽観的に親子関係を楽しんでいます。その結果、娘が留学することになって、それは彼女にとっても私にとってもハッピーな関係になりました。向いていないことを認めずに全力で頑張り続けてしまうと、精神的な依存に繋がりますし、親子関係も破綻してしまうのではないかと思います。結局、母親がいつもイライラしていると子どもにとってもマイナスなのかなあと思っています。いつもニコニコしていることが親子にとって大切なんじゃないかと私は思うようにしています。
育児を軽やかに楽しむ経沢さんの言葉は、忙しいママたちのエールとなったのではないでしょうか。ママ業は、誰かの型にはまる必要はありません。みんながオリジナルな育児を楽しめるようになれば、ママも子ももっと幸せになれますよね。 後編では、mamagirl世代が直面しがちな育児のお悩みに、経沢さんがお答えします。乞うご期待!
【経沢香保子さんプロフィール】 株式会社キッズライン代表取締役。1973年生まれ。リクルート、楽天を経て、2000年にトレンダーズを設立。2012年、当時女性最年少で東証マザーズ上場。2014年にキッズライン(旧カラーズ)創業。著書『すべての女は、自由である。』(ダイヤモンド社)他
【お問い合わせ】
キッズライン
https://kidsline.me/
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菱山恵巳子
1991年生まれのライター・コラムニスト。エンタメからビジネスまで、執筆ジャンルは多岐に渡る。恋愛漫画の原作も手掛ける。2016年に出産、男女の双子を育てる母。男性アイドルウォッチャー。Twitter:@kaerita_i
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