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「子どもの思考パターンを探ると、子育てはもっと面白くなる」ママ友ドクター®・ゆみ先生インタビュー(前編)

撮影/mamagirl編集部

Lifestyle

「子どもの思考パターンを探ると、子育てはもっと面白くなる」ママ友ドクター®・ゆみ先生インタビュー(前編)

三児の母であり、発達専門小児科医の西村佑美先生。「ママ友ドクター®・ゆみ先生」としてオンラインで育児・発達相談に答える活動も行っています。『発達特性に悩んだらはじめに読む本』(Gakken)では、発達特性がある子どもの1歳からの子育て法を網羅。今回、mamagirlではゆみ先生に特別インタビューを実施! 前編では、発達特性の基礎知識や、我が子の発達特性が気になった時のママとしての心得を伺いました。

■西村佑美先生 プロフィール
発達専門小児科医/一般社団法人 日本小児発達子育て支援協会 理事
1982年、宮城県仙台市出身。日本大学医学部卒。三児の母。重度自閉症のきょうだい児として育ち、障害児家族に寄り添える仕事がしたいとの想いから医師を志す。2011年から日本大学医学部小児科医局に所属。その後、地方病院と大学病院で発達専門外来を新設。のべ1万組以上の親子を診てきた。2020年「ママ友ドクター®」プロジェクトを始動。SNSでの情報発信や主宰する「子ども発達相談アカデミーVARY」での活動を通し、子育てに悩むママたちの支援を行ってきた。
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発達特性を持つ人が世の中で活躍する時代

―そもそも発達特性とは、なんなのでしょうか?

ゆみ先生:子どもが脳の中に持ってる神経回路の違いによって表れる、思考や行動のパターンのことです。基本的に脳の神経回路は一人ひとり異なるので、みんな多かれ少なかれ発達に特性はあります。その中でも、「一つのことに対する集中力がすごい」「好きなものに対しての興味が強い」「好奇心が強くて行動的」という特徴が、程度によってはいわゆるASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)などの特性と言われることもあります。

―ASDやADHDという言葉は最近になってよく耳にするようになった気がします。発達特性の子どもが増えている…ということでしょうか?

ゆみ先生:増えたわけではなく、認識が広まったのだと思います。この20〜30年で「目に見えない障害」をマスコミも取り上げるようになりました。バリアフリーや多様性にも理解が進み、「困ってる人たちがいるんだ」「普通とされることをうまくできない人がいるんだ」という考えが浸透した結果だと思います。なので、医師の診断がなくても「我が子は発達特性があるのかな」と考えるママも増えたのではないでしょうか。
一方、認識が広まったことにより、ちょっと個性が強いだけの子どもも、世間から「発達障害」とレッテルを貼られてしまうようにもなりました。
「障害」という表現によりネガティブなイメージもついてしまい、逆に苦しんでいるママもいる。なので、医学的にはここ数年「発達障害」という表現は使わないようになっているんです。
AIが浸透した現代は、「普通じゃない」ことに期待を持てる時代です。発達の特性がある子どもたちをどう伸ばして、活かしていくかを考えるために、今回、私の書籍でも様々な研究に基づいた、子育て方法をまとめました。

―発達特性を持つ子どもが大人になった時の不安を抱えるママもいます。

ゆみ先生:時代は変化しましたし、特性が無い普通の子どもだから将来が明るいわけではありませんよね。
まずママたちには、自分たちが進学・就職した時代のイメージからアップデートをしてほしいと思います。私たち世代は、幼い頃から丁寧にバランス良くできる人が良しとされて育ってしまいました。でも今は、いわゆる普通ではない人たちがビジネスシーンでも活躍しています。現在活躍しているビジネスマンがどういった子ども時代を過ごしていたか、書籍などで調べてみると、きっと「みんなと一緒ではない」エピソードが出てくると思います。IT関連企業が密集しているアメリカのシリコンバレーでも、ASDの特性を持つ人たちがすごく重宝されているんですよ。
これからは得意なことがあれば生きていける時代です。特性がある人たちがむしろ世の中に必要になってくるのだと、認識して良いと思っています。
自分の子どもがみんなと違うことがあると、学校生活で悩むこともあるかもしれません。でも、だからといって劣等生では決してないのです。親は、子どもの普通ではないところを、将来の自信に繋げられるようにしてあげてください。「みんなと同じだから安心」という思い込みから脱却しないと、自分の子どもを上手く見ることができませんよ。

―ママたちも意識を変えなければなりませんね。

ゆみ先生:そうですね。AIを使いこなさなければならない現代は、「答えを知っているか」ではなくて、「問いを立てる力」の方が必要になります。
問いを立てる力は、好奇心や様々な知識、視点を持ってるからこそ育まれます。例えば、「1+1=2」と答えるだけならAIがしてくれる。だからこそ人間は、その答えを知っているだけではなくて、「なぜ2なの?」ということを追求できる力が必要。そのためにママは「1+1はなぜ2なのか」を、いかに面白く子どもに教えられるかがカギになってきますよね。

特性に悩んだら、その行動の理由に思いを馳せてみて

―ママが子どもの発達特性に気付くタイミングはいつなのでしょうか?

ゆみ先生:様々なサインはあるのですが、「他の子とちょっと違うかも」と思うことが一つのきっかけになることが多いです。特に日本は「みんなと一緒が良い」とされる文化でもあるので。
「他の子と違う」ことに落ち込むのではなく、「この子にはこの子なりの理由があってみんなと同じことをしていない」と捉える。そして、何か困っていることはないかと想像することが大切です。
例えば、言葉の発達が遅くて癇癪が強い子どもは、言葉がうまく喋れない分、体で感情を表現している状態なんです。それがわかれば、「癇癪がある困った子」ではなく「自分の意見をきちんと主張できる子」と捉えられますよね。
ちなみに、言葉の発達が遅い子どもは視覚情報で物事を判断することが得意な場合が多いんですよ。だから私も「子どもがなかなか言葉を話さない」というママの悩みを聞く時は、「言葉のやりとりに頼らず、目で見て判断する力がありそうですね」という話をします。
他の子と違うと感じても、発達特性として捉えて子どもの思考パターンを理解できれば、子育てはもっと面白くなるのではないでしょうか。

―私も子どもの癇癪に悩んだことがあったので、そうやって理解してあげれば良かったのか…と、反省もあります。

ゆみ先生:私も自分の子育てでは、3人目から落ち着いて子どもの特性に対応できるようになりましたよ。でも、子育てって本当にあっという間に終わってしまいます! 辛いなと思っても、ちょっと発想を変えてみる。子どもがギャーギャー騒いでいるなら「そんなに泣くくらいママのことが好きなのね…」というように(笑)。良い意味で半歩引いた視点で見ると、冷静に対応することができると思います。
子どもの行動には必ず理由があります。その理由や、その子ならではの思考パターンを見つめ直すトレーニングをすると、子育てが面白くなってきますよ。
目の前で子どもに癇癪を起こされると、「なんて悪い子なの」と頭に浮かびがち。でも3回に1回で良いので、「理由があって泣いているんだ」「訴えたいことがあるんだ」「ママがすごく好きで寂しいのかもしれない」ということに思いを馳せてみてください。

「得意」を見つけるために、外遊びや旅行などリアルな体験を

―子どもの特性をその子の魅力として花咲かせるために、親はどんなことを意識すれば良いでしょうか?

ゆみ先生:外遊びや旅行といったリアルな体験をさせてください。その中で何にハマるかを見れば、その子の将来像も見えてくるはずです。
また特性がある子は、習い事も、ありきたりな枠にはまらないこともあります。
我が家の長男にも発達特性があって。小学校に入るとMinecraftやプログラミングのスクラッチにハマっていたので、親としては、ちゃんと学んで将来に繋がったら…という思惑もあり、小学校3年生の時にプログラミング教室の体験に行かせました。すごく楽しそうだったので、「通って良いよ」と言ったところ、意外にも反応はいまいちだったんです。その理由を聞いたら「だって自分でできるんだもん」と。結局、特性とやりたいことがマッチすると、習わなくても理解できてしまうんです。
だから、もし学校という小さな世界の中で苦手なモノが多くて馴染めず、上手くいかなくても、その子には他に輝ける世界があるはず。その子の得意を見つけるために、体験や、習い事や別のコミュニティにどんどん連れ出してあげてください。

■書籍情報

『発達特性に悩んだらはじめに読む本』(Gakken)
著:西村佑美 

後編では、ゆみ先生の子育てについてや、子どもとの関係がもっと良くなる接し方などをご紹介。ママなら知っておきたい知識盛りだくさんです♪

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菱山恵巳子

ライター
1991年生まれのライター・コラムニスト。エンタメからビジネスまで、執筆ジャンルは多岐に渡る。恋愛漫画の原作も手掛ける。2016年に出産、男女の双子を育てる母。男性アイドルウォッチャー。Twitter:@kaerita_i
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