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「すごい!」の代わりに何を伝える? 子どもを伸ばし親子関係を良くする【ほめ方&叱り方】
「すごいね!」「えらいね!」子どもに対してよかれと思って口にしているその言葉、実は子どもの自主性を損なってしまっているかも。では、子どもに対する正しいほめ方や叱り方とは? 『モンテッソーリ教育・レッジョ・エミリア教育を知り尽くしたオックスフォード児童発達学博士が語る 自分でできる子に育つほめ方叱り方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者でカナダ在住の島村華子さんが、子どもへのより効果的な声掛けを教えてくれました。インタビュー前編です。
「天才!」「かわいい!」ではなく、がんばってきた過程に目を向けて
オックスフォード大学 修士博士課程修了(児童発達学)。モンテッソーリ&レッジョ・エミリア教育研究者。上智大学卒業後、カナダのバンクーバーに渡りモンテッソーリ国際協会(AMI)の教員資格免許を取得。カナダのモンテッソーリ幼稚園での教員生活を経て、 オックスフォード大学にて児童発達学の修士、博士課程修了。現在はカナダの大学にて幼児教育の教員養成に関わる。

ーー子どもをほめる時つい「すごいね〜!」と言いがちです。正しい「ほめ方」について教えてください!
島村:結果だけにとらわれず、子どもが頑張ってきた過程や工夫のプロセスを認める声掛けが大切です。
例えば「テストで100点とったなんて天才!」のように、性格や能力、外見など「人」にフォーカスしたほめ方ではなく「100点とれるようになるまで毎日コツコツ諦めずがんばっていたよね」という声掛けです。アドラー心理学では「励まし」と呼ばれていて、「あなたのプロセスを見ていた」ということを子どもに伝える方法です。
ーーなぜ、人にフォーカスしたほめ方が良くないのでしょうか?
島村:人にフォーカスしたほめ方には、「頭が良い」「かわいい」「いつも優しい」などのほめ方も含まれます。子どもにとっては「自分がそうでなくなった時に自分の評価が落ちるのではないか」というプレッシャーになってしまうんです。例えば、「かわいくなくなったら愛されない」「100点がとれなかったら自分には価値がない」というように。外的な評価に自分を合わせる生き方になってしまうんですね。だからこそ自己肯定感も不安定になってしまいます。
また、そういったほめ方をされ続けた子どもは、自己防衛に走ってしまうこともあります。例えばいつも「頭が良い」と言われてきた子が、自分の評価を守るためにテスト前に「昨日は全然勉強できなかったんだよね」と言いふらす。これは万が一うまくいかなかった時に「自分の能力のせいではなく、外的な影響のせい」という言い訳をしているんです。この癖がついてしまうと、色々なことに対する挑戦の姿勢がなくなってしまいます。
他にも「かわいいね」と外見のことばかりをほめ続けることは「かわいくないことは悪いこと」というルッキズムにも繋がります。「男の子だから泣かなくてえらい」というほめ方もジェンダーのステレオタイプを植え付けることになりますよね。子どもたちを型にはめないためにも、人にフォーカスしたほめ方はあまり好ましくありません。
ーープロセスをほめると、どんな良いことがあるのでしょうか?
島村:子どものことをよく見ていないと、プロセスをほめることができないですよね? つまり、プロセスをほめることは「あなたのことをちゃんと見ているよ」というメッセージでもあります。子どもにとって、親が見てくれているというのは安心感に繋がるんです。

ーーまさに、テストの点が良かった子どもに対して「すごい」「頭良いね」というほめ方をしていました。なんだか子ども自身も「ほめられるからがんばる」といった「ほめられ待ち」になっている気がします。
島村:お子さんのモチベーションが「ママにほめられる」という外的なことになってしまっているんですね。改善のためには、子どもが何に興味を持っているのか、会話を通じて見つけることが重要かなと思います。
ほめるって、結局は大人が上から一方的に評価を与えているに過ぎないんです。ほめ続けることは、子どもから発話の機会を奪っていることにもなります。実は、子どもの言語発達にとっても、子どもに発話の機会をたくさん与えることが大切で。
なので、ほめるだけでなく「今日学校で習ったことで、何がいちばん楽しかったかママに教えて?」のように、本人が楽しいと思っていることを質問して、興味を引き出すことが大切です。子どもが自分の興味に目を向けられれば、それがモチベーションにもなります。そうすることで「ほめられ待ち」から脱却できると思いますよ。
「3つの良かったこと」を毎日子どもとシェアする習慣を
ーープロセスに目を向けようとすると、どうしても悪いことばかりに目がいってしまいます…。
島村:あるあるですよね(笑)。良いところに目を向けるトレーニングとしてオススメなのが、その日にあった「ちょっとした良いこと」を子どもとシェアする「Three Good Things」という方法。人の脳は、進化の過程で得た防衛本能で、どうしても悪いことに集中するようになっています。意識しないとネガティブになってしまうんです。だからあえてポジティブに目を向けるようにする習慣が必要。例えば「たまたま買ったコーヒーがおいしかった」とか些細なことでも良いんです。そこに無理矢理でも子どもの良いところを入れるとより良いですよね。「今日こういうことを言ってくれてうれしかった」とか。それを子どもとシェアすることで、「親子でなんでも話して良い」という心理的安全性も確保できますよ。

ーーこれまで子どもに対して、よくないほめ方をしてきた場合、今からほめ方を変えることで効果はあるのでしょうか?
島村:十分効果はあります。これまで「すごい!」などのおざなりなほめ方をしていたとしたら、何がすごかったのか具体的な言葉をひとつ加えるだけでも良いと思います。「親が自分のことを気にかけてくれている」というのは、今後、思春期になったとしてもうれしいものなんです。思春期ってほっといてほしい態度をとっていたとしても、内心は気にかけて欲しいものなんですよ。
ーー忙しいとどうしてもほめ方もおざなりに…。そんなママが、子どもをほめるためのコツはありますか?
島村:プロセスを見ていなかった場合、実況中継のように見たものを言葉にするだけでも良いです。例えば幼い子どもが積み木で何か作った時には「色んな色の積み木を重ねたんだね」「〇〇ちゃんと同じ背の高さまで積めたんだね」というように。ただ「すごい」で終わるより「あなたが工夫したところを見ている」ということを伝えてください。
また、子どもと話す時間を普段のルーティンに取り入れることもオススメです。寝る前やお風呂の時や夕飯の時など、1日5分でも良いので今日あったことを1対1でシェアする。子どもも「この時間だったら親に話せる」と思えて安心感に繋がります。
叱りたい時、親は「裁判官」ではなく「探偵」でいる意識を
ーーでは続いて叱り方について。叱る際に気をつけるべきことはありますか?
島村:まず否定するのではなく、子どもがやりたかったことや気持ちを想像し、それをひと言めにクッションとして加えることがとても大切です。「なんでこんなことするの!」ではなく「これをこうしたかったんだよね」というひと言です。それだけで、子どもも大人の話を聞く姿勢になります。
まずは子どもと繋がらないと、子どもの行動は修正できません。クッションとしてのひと言目は、子どもと繋がるためのもの。そして次のステップでどんな理由で何がよくなかったかを簡潔に示す。大きなお子さんだったら、次に同じことがあった時にはどうしたら良いか解決策を一緒に考えることも良いですね。

ーーいつも「何やってんの!」がひと言目に来てしまうので、反省です。
島村:イライラボタンを押されすぎると、親もどうしても攻撃モードになってしまいますよね。でも、親は「裁判官」ではなくて「探偵」でいるよう心がけてください。「裁判官」は良い・悪いを判断する人ですが、探偵は「なぜこうなったか」を探る人です。
大人だって頭ごなしで怒られたら嫌ですし、相手に対して警戒心を抱いてしまいます。そうすると聞く耳も持ちにくいですよね。子どもに対してもリスペクトを持って、「自分もこうされたい」と思うような対応を心がけてみてください。
ーー叱り方を変えることで親子関係も変わりますか?
島村:もちろんです。特に小学生くらいになると自分で論理的に考える力も発達してくるので、親が理由を説明したことも、伝わりやすいと思います。叱り方にせよ、いつでも親としてのベストを探している状態を素直に見せることは大事なことですよ。「良い親になれるように柔軟にがんばっている」というメッセージはいつからでも伝わります。

子どもの行動の裏に目を向ける。対話を通して興味や気持ちを引き出す。そんなちょっとしたママの意識が子どもの自己肯定感を育み、親子関係をより豊かなものにしてくれます。
インタビュー後編では、海外の教育現場から見た日本との違い、また思春期の子どもの接し方や、ママの心の平穏を保つ方法をお聞きしています。
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菱山恵巳子
1991年生まれのライター・コラムニスト。エンタメからビジネスまで、執筆ジャンルは多岐に渡る。恋愛漫画の原作も手掛ける。2016年に出産、男女の双子を育てる母。男性アイドルウォッチャー。
https://www.instagram.com/emiko_hishiyama/
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